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    いぬねこぐらし|國森由美子のキャッツアイ通信「世のねこ」

    この連載では、「世の中」の諸地域の猫事情をご紹介! 猫や動物が大好きな方、猫と暮らしている方はぜひご覧ください。
    筆者と愛猫ミルテのオランダねこ暮らしも毎月お届けします♪

    記事一覧

    ちび猫くんとクリスマスツリー

    クリスマス・スペシャル号

    ~オランダ猫文学スペシャルセレクト~ ちび猫くんとクリスマスツリー

    今回はクリスマス・スペシャルとして、オランダ語で書かれたエッセイ集『カルミッヘルト家のパタパタ猫騒動』からの断章を國森の翻訳にてお届けいたします。お楽しみいただければまことに幸いです。

    著者:シモン・カルミッヘルト氏

    シモン・カルミッヘルト
    (國森由美子 / 訳)

    クリスマスの日々は、予定どおりに過ぎていった。
    子どもたちは

    「その足、どけてよ! あたしが´天使の髪´を飾るんだから」とか
    「パパ、こいつったら、またてっぺんを取ろうとしてるんだよ、くじ引きで決めるはずだったのに」

    ツリー

    などという叫び声をあげつつ、たがいに押したり蹴ったりしながらツリーを飾りつけていた。
    そんな日に父さんというものがかたわらで

    「寒風窓を撃つ聲 爐邊に団欒あり(強風が叩きつける閉ざされた窓の内側にはあたたかな憩いがある)」

    などと、詩の文句よろしく口を横に大きく広げ、かのゆったりとしたいい笑顔を浮かべていても、子どもたちはそんななごやかな幻想などぶち壊してしまう。
    そうして、あともう何度か火花が散ったのちにツリーは美しくきらめき立ち、飾りつけ師たちはといえば、スケートに出かけてしまった。
    そう、この年頃には、日々の楽しみを放棄することなどありえないのだからね。

    クリスマスツリーのもとでわたしがひとりになると、ちび猫くんが部屋に入ってきた。
    猫たちというのは人間世界の思い上がった概念で測れば少々まぬけだが、部屋に何か変わったことがあればたちまちのうちにそれに気づくものだ。
    クリスマスツリーを前に、ちび猫くんはあっけに取られポカンとしていた。そしてひとたび腰を落ちつけて座り、まるでバチカンのシスティーナ礼拝堂にようやくたどり着いた田舎者のようにこの芸術作品を見つめていた。
    しかし、そうして身を捧げていたのもつかの間、こいつめはまたしても企みを思いついたのだ。

    はじめのうち、ちび猫くんは、ツリーを乗せた小さなテーブルを覆うシーツの裏に隠れてみたりして、わたしの壊れやすいクリスマスの機嫌をうかがっていた。
    そこでカサコソドタバタするのが聞こえ、しばらくするとちび猫くんは、妻が布の裏側に押し込んだ物体とともに姿を見せた。
    それが、一連のいたずらのはじまりだった。ちび猫くんが前足で器用にかき出すのは糸巻きかと思えば次には画鋲(びょう)の箱であり、それは敵のゴールへドリブルしながら楽々とボールを運んでいくセンターフォワードのようだった。

    「こら、やめ!」

    と、わたしが怒鳴ったのは、ちび猫くんがそうして「物体その12」を部屋の中に引き入れた時だった。ちび猫くんはびっくりし、糸巻きをそのままにするとふたたびツリーの根もとにちょこんと座り、さもこう言いたげにわたしの方へ顔を向けた。

    「見てるだけだもん、それとも、それもダメだっていうの?」
    「どこにも触らないならな」

    わたしは言い、同人誌の定期刊行物にお祝いらしさを添えるためのいささか陳腐なクリスマスストーリーにおとなしく取りかかった。

    しじみちゃん(撮影者:あまりゅうさん)

    それが聞こえたのは、二段落目に入ったところだった。
    スイス山中の牧場でよく耳にするカウベルのような響きのかすかに混じった奇妙な音だった。
    頭を上げると、ツリーの間にちび猫くんがいるのが見えた。それは二段目の枝の´青い天使´の上で、ちび猫くんの目の前には´天使の髪´が一房(ふさ)、芸術的にきらめいていた。

    「もう、おまえというやつはまったく…」

    わたしは、今まさに助け舟を出そうとしている者のような足取りで近寄った。

    「うわぁ、ななめになっちゃったよう」

    ちび猫くんがそう思っているのがわかった。

    しかし、揺れる飾りもろとも傾きつつ倒れてきたのは、どちらかといえばまず、ツリーの方だった。ツリー上のちび猫くんは、わたしに捕まらないようすばやく体をひっこめてしまったのだ。

    「出ておいで!」

    途方(とほう)に暮れわたしは呼んだが、そこにいるのがすっかり気に入ったちび猫くんは、リング飾りをちょっと舐めたりしていた。

    ツリーがまるごと崩れ落ちないようにして捕まえる手だてはただ一つ、それはちび猫くんの頭を狙うことだ。
    わたしは、溺れる人を救助するときのようにして両手をちび猫くんのあごの下に入れ、それから体ごと引きずり出した。宙吊りになって息苦しくなったちび猫くんは、もがいて逃れるとくるんと宙返りし、床の敷物の上に背中から落下した。
    急いで体勢を立て直したちび猫くんが

    「もう、これだって、ひどいじゃないか!」という目つきをして棚の下へ消えたのが見えた。

    それから五分しても何の物音もしないので、わたしは悔いた。そして「どこか折ったのだ」と思い、床に長々とはいつくばると棚の下の暗がりでちび猫くんをすまなさそうに呼んだ。

    「おいで、もう何もしないよ!」

    ──無言…。もしや、あちら側で死んでいるのでは…奥の方までもぐり込んでみようか?
    それとも、もう一度呼んでみようか?

    しかし、さてどうしたものかと思いをめぐらせていたちょうどそのとき、居間のテーブルの上に大股開いて立ち、クリスマスのリングケーキをうまそうにむさぼり食っているちび猫くんの姿が目に入った。

    こうして、ちび猫くんには、いつも甘くなってしまうのだ。

    (『カルミッヘルト家のパタパタ猫騒動』1952年初版刊より)

    今月のミルテ「庭に放置していたほおずき、12月にはこんなことに…」

    白うさぎさん、このほおずきも
    クリスマスツリーに飾ったらどうかなあ。

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